ビッグバン宇宙論

サイモン・シンによって書かれたこの本は古代各地の創世神話からビッグバン理論に至まで、当時の人々が何を根拠にどのように宇宙を理解してきたかを優しく解説したものです.
相対性理論、量子力学などの助けを借りて現在のビッグバン宇宙論にいたるまで、エピソードも交えながらの話の展開は面白く、学校ではぶつ切りにしか教えられなかった理論が一本の道の上にきちんと綺麗に並んでいます.
しかし私が一番面白かったのはこの本の中にあった「セレンディピティー」という言葉です.
1754年に作家のホラス・ウォルポールによって作りだされた造語ですが、いわゆる「まぐれ当たり」「偶然の発見」を意味します.
例えば棘だらけの植物の種がズボンにたくさん付いてしまった時、その棘を観察し先が鉤型になっていたのをヒントにできたのがベルクロテープです.またペニシリンの発見は窓から飛んできた青カビが実験中のシャーレに落ち培養していた細菌を殺したことから始まります.
このようにセレンディピティーは私たちの周りに数多く存在するのですがそれを偉大な発見にまで持っていくには適切な文脈の中で位置づけるだけの知識を蓄積していないとできないのです.それで「チャンスは備えあるものに訪れる」とパスツールはいったそうです.この本の中にはセレンディピティーの話が数多く出てきます.天文学のような特にセレンディピティーが重要なのでしょうが、我々の普段の仕事でもやはり感性をとぎすませていないとチャンスは見逃してしまうのでしょう.