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まめ知識20 建築の質とコスト

6年後には東京でオリンピックですが、国立競技場の建替え問題で建築の設計界では色々な意見が飛び交っています。計画案そのものに対して、審査過程と審査経過の発表、環境問題、維持費、建設コストの問題などが主なところですが皆さんにも関係の深い建設コストの問題について少し掘り下げてみたいと思います。

設計コンペ当時の要項では1300億円の予算であったのが、概算で3000億円かかることが分かり、基本設計見直しに。新たに縮小された基本設計がまとまりましたが概算見積額は1600億円を超えたそうです。私にはやはり3000億円を超える建物に見えるんですが・・・
計画案を見ると、流線型の宇宙船の様な未来的な外観が目に留まりますが、私が一番驚いているのが屋根を支える構造です。長手方向の両端で地面に接地する長さ500mの端の様な大きなアーチ二本で支えています。計画変更で短くなりましたがそれでも400mあります。橋の様な構造だと思ってもらえば良いでしょう。この構造体が問題です。建築というよりは土木の世界の技術になりますから、桁違いのお金がかかると思うのです。この構造を採用する限り予算は大幅にオーバーすること間違いないと思っています。しかも現時点での見積もりですから、今後の資材の高騰と人手不足に陥ることを考えるとさらに上がることは間違いなさそうです。建設業界は長く続いたデフレの影響でベテラン、働き盛りの年齢層が急激に減っています。ベテランは年寄りばかり、3Kの現場には若い人も来てくれないのが現状だそうです。群馬県のデータによると10年以上新卒を採っていない建設会社が3割、5年以上だと5割を超えるそうで急に公共事業を増やすと言われても対処できないと悲鳴を上げています。
 昔の話になりますが日本中がバブルに沸いていた頃、設計するものするものが軒並み予算オーバーになった頃が有りました。倍とは言わないまでも5割増は当たり前、それよりも建設工事をしてくれる業者を見つけるのが大変、という頃がありました。今回はそのようにはならないでしょうが、今後住宅規模の設計でも資材と人材の問題で予算オーバーという事態は避けられそうにない雰囲気です。

 小規模建築の話しで恐縮ですが、私の住宅やアパートの設計の経験からコストの話しを進めさせていただきます。設計を進めるにあたり、提示されたコストに合わせて設計を考えるというのは当たり前と考えています。同じ施主、土地で同じ床面積あっても住宅の建設予算が4000万円と3000万円では仕上材料が違うだけではなく建物の形から構造、開口部の考え方まですべて違うからです。超ローコストの家であればデコボコと複雑な外観や中庭を取ることは最初から考えられません。単純な四角い箱の中で住みやすく快適で豊かな空間を造るように心がけます。一方多少しでも予算に余裕が有る時には建物を掘り下げてみたり外観が複雑になったりする条件の中で同じように住みやすく快適な家を造ることを考えます。さらに予算がある時に初めて壁の仕上や高い材料などを考える訳です。
余談ですがこの最後に書いた「材料」が高級であるかどうかが税務署の建物の評価額に大きく関係してきます。ですから我々建築家が設計する住宅の評価額は概ね低く、逆にケヤキの一枚板、4方無節のヒノキの通し柱、秋田杉中杢の天井板等を多用している風呂屋の様な外観の農家の建物が一番高く評価されるのです。
以上の様な理由から予算3000万円と言われていたが、実は始めから4000万円はかけるつもりでいた、というのが一番困ってしまいます。

住宅の場合、予算が先にありきの場合が多いですから一概に新国立競技場のケースとは比べられませんが、私のように30年も住宅や採算上の問題のあるアパートを設計しているとコストの問題は一番重要な問題になってしまいます。
 一方海外では・・・
イタリアの巨匠、カルロ・スカルパという有名な建築家がいましたが彼の設計する住宅は完成するまで10年以上かかるものも少なくなかったと言います。スカルパ曰く「設計上の問題は建築家の問題であるが、建設資金の問題は建て主にある」ということだそうです。私も一度で良いので言ってみたい台詞です。ということですから建て主の資金が枯渇してしまうと建設は止まり、またお金ができるまでそのまま放置されてしまう訳です。これはイタリアのお国柄かもしれませんが、同じ理由で建設が途中で止まっている建物をよく街中で見かけました。
 コストが一番大事と書いてきましたが公共建築等、頑張れば予算がとれるかもしれないといった中では、建設コストが上がるということはそれほどひどいことなのかと言うと?印もついてしまうので厄介です。考えさせられてしまう一例を挙げてみましょう。
 日本の現代建築に対しアンケートをとると一番優れた建築物は前回の東京オリンピックで丹下健三氏によって設計された「代々木のオリンピックプール」がいつの時代もダントツの一位です。この建物ですが設計が終わった時点で実は当初の予算の2倍になってしまい、丹下健三が直接大臣に予算を取ってもらえるように直談判に行ったと言われています。半分の予算のまま設計を変えて完成していたら今の様な絶対的な評価は得られなかったでしょう。また、コスト削減のため屋根をステンレス板で葺く予定であったのをカラー鉄板に変更したため、現在でも定期的に屋根の補修とペンキの塗り替えをせねばならず、その維持費に膨大な費用がかかっているようです。
この問題はイニシャルコストとランニングコストの関係に他ならず、住宅でも同じ問題があります。建設時にちょっとケチってしまったためその後ずっと維持費がかかってしまうことなどそこら中で聞く話しです。前にも書きましたが、断熱材などが良い例で、建設当時にしっかりと入れておけば数十万円もかからないものをケチってしまうと住んでいて不愉快なだけでなく毎月の光熱費もバカになりません。
以上のようなことをすべて配慮したうえ、コストをどこにかけるか、ランニングコストを考えると何が良いのか、予算オーバーでも後々気に入ってもらえる案が良いのかなど総合的に判断して私は最初の案を提出しています。
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